浪人生ジャンピングキャッチャーズ

歴史に残る風来坊になるよ。

キンタマ出せ。握りつぶしたるから。

今夜僕は友人と殴り合った。

高校の同級生であった彼と公園で殴り合った。

僕は冴えなく、内気で人に気をつかってばっかりな人間だ。

彼も決して不良ではなく、どちらかというと教室の端で本を読んでいるようなタイプの友人である。

きっかけは些細なことだった。彼と僕とはよくお互いを煽りあって楽しんでいた。 相手を馬鹿にする言い回しだったり、明らかに理不尽なことをさも当たり前かのように言い出したりする冗談が面白かった。

いつもはお互い煽りあってはいるもののそれを間に受けたりはせずに流していたのだが、今日は違った。

彼からの挑発ともとれる発言に対してどういうことか冗談で済ませずに徹底的に戦ってやろうと思った。

心にゆとりがなかったのだろう。なんてこともない煽り文に対して僕も挑発的な態度をとった。

街が静かになった時、最寄駅の近くの公園で決闘を挑んだ。鈴虫が夜風に吹かれて鳴いていた。

その時は彼個人に対する怒りなんて全くなかった。

とにかく目の前の男を無理矢理地べたに押し付けて謝らせたかったのだ。

彼はボクシングの動画をみているので負ける気がしないなどと言っていた。

喧嘩など小学生以来してこなかった、穏便な学生生活を送ってきた僕がなぜここまで好戦的な気持ちになったのだろう。

公園のベンチに参考書の入ったリュックサックを置き、彼は殴りかかってきた。

彼の右ストレートは僕の顎をかすった。

僕は完全にスイッチを切り替えて向かっていった。

しかし彼は前傾姿勢で向かっていった僕の腹を蹴り上げた。

痛みはなかった。そのまま僕は彼の首を抱えて地面に投げつけようと試みた。

彼も必死に抵抗しようとしていたが、僕は精一杯の力で雑草の生い茂った草むらに彼を叩きつけて上からのし掛かった。

オラ!謝れや!カス!! あんだけ威張ってたくせに大したことないな!!

などと罵声を浴びせながら拳で殴るのではなく平手打ちをして、彼を辱めた。まさに君が泣くまで殴るのをやめないといったところだ。

謝れや!!オイ!!!!

彼は小さい声でなんどもすみません、と言った

何を反省してんのか言ってみろ!!!オイ!!

彼は黙り込んでしまった。

あの様な状況で自分が何を反省しているのか考える余裕がなかったのだろう。

これは性行為のうえでの言葉責めと同じ様なことが言えるのではないかななんて思った。

僕は圧倒的な優位な状況に満足して、彼の背中から離れた。

僕は今までに体験したことがない興奮状態であったことに気がつくと猛烈に蹴り上げられた腹部に鈍い痛みが現れた。

彼は左目が痣ができていて、涙を流していた。

少しして二人とも落ち着いて、話を始めた。

田舎の俗に言う自称進学校に通うような生徒は殴り合いをすることは少ないだろう。

この経験から2つのことを学べた。

1つ目は絶対に背後を見せるなということ。 戦う意思を最後まで見せなければすなはちそれは敗北を意味する。自分には勝てないと思っても決して逃げてはならない。うまく逃げることができるならばそれに越したことはないが、あの一対一の神経を研ぎ澄まされた空間ではおそらくうまくいかないだろう。 今回は違ったが、本当に恨みの積もった喧嘩であれば容赦することはないだろう。

2つ目は相手が二人以上ならば絶対に戦うなということ。一対一でも相手の動きに手が話すことができないので、複数ならいうまでもない。武道の心得がある場合でも複数を相手にするのは間違い無く避けるべきだ。喧嘩をしている時は頭に血が上って暴走してしまいがちだが、これだけはわきまえておいたほうがいい。

喧嘩 と聞くとものすごく野蛮なイメージがある。

頭が悪い人がすることだと思われているかもしれない。

確かにそうだ。 喧嘩なんてやらないほうがいい。 僕もそう思ってた。

しかし喧嘩がここまで自分に非日常を味わわせてくれるとは思ってもみなかった。

信じられないほどの興奮があった。 今までに無いほど集中力を高めた。

アドレナリンの効果がなくなってから気づくまでの超越体験。

酒やタバコに通ずるものがあるのだろう